こざくらだより　第六回　「下町情緒」 - 【公式】かりんとう浅草小桜オンラインショップ

こざくらだより

　
第六回「下町情緒」

　“象潟や雨に西施がねぶの花“

象潟（きさかた）の浜辺に咲いている白く可憐な「ねぶの花」が雨に濡れている様は中国の絶世の美女と言われた「西施」が目蓋を閉じ、涙を流しているような美しさが感じられ、象潟の風情を象徴しているように見える。
松尾芭蕉は「奥の細道」で松島と秋田県象潟の地を訪れ、多くの句を残している。
象潟は古くから景勝の地として知られていた。

弊店のある観音裏界隈はかっては象潟と言う町だった。
江戸時代に秋田県象潟町一帯を治めていた本荘藩主六郷政鑑が赴任して来た下屋敷が今の浅草四丁目辺りに置かれていたため、ここが象潟と呼ばれるようになった。本家の象潟は美しい入り江と潟があり景勝地だった。
六郷政鑑は遠く離れた故郷に思いをはせ、明治初頭に現在の浅草三～五丁目辺りを象潟と名付けた。昔はこの辺りも田園が広がり丁度、潟のように見えたそうだ。

観音様を中心に浅草は日本有数の観光地・歓楽街に今やなっているのが不思議に思える。
思うことは先人が心を込めて名付けた情緒ある町名がいとも簡単に浅草四丁目などと言う味もそっけもない町名にしてしまうことにある種の腹立たしさを感ずる。
今や浅草も下町情緒など薄れてきている。
店主の子供の頃は平屋か二階屋の立ち並ぶ町だったが、最近は土地が空けば駐車場やマンションそして最近、流行りの宿屋等が無計画に立ち、味もそっけもない町になってしまっている。
せめて町名ぐらい情緒のある名前を残して欲しいものだ。
「浅草四丁目」でなく、「象潟」を残したいと言う思いで小桜かりんとうの詰合せ箱に「きさかた」と命名し、小さな意地を張っている。

２０２３．０５．０１．　小桜店主

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